YUKO
IKEMA
LIVE
AT
QUIET VILLAGE
2018.03.18.
愛知県岡崎市にあるQuiet Villageにて
シンガーソングライター 池間 由布子さんのライブが行われた。
岡崎市に来るのは今回が初とのこと。
前日は京都の〝まほろば〟でライブを披露されていた。
ジャニスジョプリンを彷彿とさせる髪とギター。
ジュリエットグレコを彷彿とさせる黒のボディラインにそったニットワンピース。
そして、彼女自身を彷彿とさせる、人生を楽しんで生きてきたことを証明するような歌声。
ときに思うのは、良い音楽、良いミュージシャン、良い歌い手とは、独自のリズムを持っている人たちなのではないかと。
それは日本語、英語、フランス語、ドイツ語、何語でも関係ない。
きっと、自身のバックグラウンドを忠実に表せている、注げれている人たちなのではないかと思う。
そして、この池間さんもまぎれもなくそうだ。
今回のライブのあと、彼女の過去のライブ映像を観てみた。
彼女がシンガーソングライターとして活動をしはじめたのは2011年。
東北震災の年だ。何か影響があったのかもしれない。そう思うと、彼女の歌声はどこか、
当たりようのない無情に怒らずに、受け入れることこそ希望の第一歩だ、そしてなるようになるから〝大丈夫〟という感覚をしっとりと僕らに降らせてくれる。
初期の頃の彼女はやはり18日のライブのときの彼女より初心さが際立つ。
恥ずかしそうに前傾姿勢で赤子を抱くように、膝から滑り落ちてしまいそうなポジションでギターを覆っている。
少し、個人的なことを話そう。
この18日、初めの1曲目のタイミングで右手に持っていたアイスラテを僕はたった1曲の中盤すぎで全て飲み干してしまった。それはきっと、良い歌い手に出会った驚きの照れ隠しだったのだろうと、いまになって思う。生唾を飲み込むように、冷えたラテを流し込んでいた。
2曲目からは、予約制だったためあらかじめ用意されていた、まさかの彼女の歌い場所の真横の席に座った。アイスラテに流れ出たはずの僕の集中力はいまだ十分に残っていて、2曲目からもより一層どっぷりと浸かった。
コードやアルペジオを爪弾く彼女の左手の指は、とても誇らしく演奏をサポートしていた。そしてストロークする右手はまるで、ストイックなドラマーのように、ひたむきにギターのボディに向いたままリズム隊を徹底していた。
彼女の歌は、たった一人の人間の人生も、まるで大木が種から成長し、葉を実らすように、ひとしずくの雨粒から水たまりができ、やがて湖になってしまうように、宇宙の塵が磁力で引き付け合い、やがて惑星になってしまうように、そんな自然現象と同じように、偉大で、感慨深く、その全てに価値があり、全ての自然がそうであるように、いずれは風化し、朽ち、枯れ、腐り、粉になり、大気に還っていくことを、〝美しい私たちのありさま〟として歌っているように、僕には聴こえた。
そしてご本人もまた、非常に愛くるしい方で、とにかく楽しそうに歌うその姿は、その表情をみたり、彼女自身をアコースティックの音色とともに音に乗せて浮かばせることで、柔らかく強く生きる種をオーディエンスの人たちに降らせているようだ。
〝リアル〟というほど辛辣ではなく、〝ポップ〟というほど軽くないその歌詞は、そんなリアルな現実の中でこそ時にはポップな精神で、悲しい出来事には泣くのではなく、泣き笑いで返そうという姿勢として受け止めれる。
会ってよし、知ってよし、聴いてよしの三拍子揃った人。
是非ともライブで〝来てよかった、知ってよかった、聴けてよかった〟を体験してほしい。
シンガーソングライター。2010年より弾き語りを始める。ユニット活動を経て、2011年よりソロ活動をスタート。テニスコーツのコーラスやうんどら合唱隊などに参加。2013年8月にファーストミニアルバム『エクスキューズ・ミイ』を発表。2015年、全国流通アルバムの『しゅあろあろ』をリリース。昨年2017年にフルアルバム『明るい窓』をリリース。